galaxx’s diary

とあるオタクの一人語り。

進路決定・院試合格体験記(TOEFLポロリもあるよ!)

 

このたび、東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻に合格させていただきました。

後学のために記します。

 

 

それって、本当に宇宙?

前提として、自分は東京大学の理学部物理学科に所属していました。この学科は直接の上部の組織として理学系研究科物理学専攻を持っていて、講義を担当する教授のほとんどはそこに所属する教授でした。自分も最初は物理学専攻の中から選ぶんだろうな~と思っていました。4年の5月頃までは。

5月頃にもなると研究室訪問の波も穏やかになり、みんなゆるりと志望先を決めているような雰囲気が漂い始めます。そんな中で、思い付きから志望する予定だった物理学専攻A8サブコース(宇宙に関する実験をやっているところ)の修士論文を眺めていました。ライセンスさえあれば読み放題です。東京大学様様。

そこで気づいてしまったのです。

 

これ、そんなに面白くなくね……?

 

自分が見かけた限りでのA8サブコースの修士論文は、〇〇(何かしらの天体)のための○○技術のような体裁をとっているものがほとんどで、つまり具体的な天体の観測に応用する前段階としてリリースされているものが多かったことに気づきました。中身も見てみると、この素子の読み出し速度がいくらで~のような装置開発の際に気を付けるポイントが内容のほとんどを占めていて、天体要素は理論的背景の部分にこじんまりと書かれているという感じでした。

それに対して、それって宇宙に関する研究というよりモノづくりの研究なのでは……?という感想を抱きました(まあ志望しようとするところの修士論文には最初から目を通しておけという話ではあるんですが)。かといってA5サブコース(宇宙理論をやっているところ)は研究室数も少なく、優秀な層がこぞって受けるので自分が受かることは考えにくい。そこで4年の5月でありながら、志望先を大幅に変えることを決意しました。

 

進路決定!しかし……

 

ひとくちに宇宙っぽいといってもいろいろな方向性がありますが、自分の場合は宇宙の全体的な構造や惑星系といったスケールの話よりは、いち天体ぐらいのスケールに興味がありました。デカすぎる話も小さすぎる話も同程度に無縁で、一つの天体ぐらいの大きさがちょうどよく身近に思えるのではないか、と考えたからです。さらに、なかでも宇宙空間での電磁流体の物理に興味があり、それが生み出す現象の研究などができればいいと思いました。

というわけで、物理学専攻以外の大学院でいち天体ぐらいのスケールの物理について研究できるところを血眼になって探しまくった結果、

・東大の理学系研究科、地球惑星科学専攻・天文学専攻

・東大の総合文化研究科、広域科学専攻

総合研究大学院大学、天文科学コース

一つ目はまあいいとして、二つ目や三つ目があまり見慣れないかもしれません。

実はあまり知られていないことですが、東大の総合文化研究科(主に駒場に研究室を持っています)でも天体物理をやることができます。たしかに規模はあまり大きくなく、ジャンルもある程度限られるかもしれませんが、宇宙流体や中性子星の物理について興味がある人はぜひぜひおすすめしたいと思います。穴場だし……詳しくはこちらから。

三つ目ですが、そもそも総合研究大学院大学自体が知る人ぞ知るという感じかもしれません。ざっくり言うと国内の名だたる研究機関が連名で作った大学院だけの大学であり、母体となる機関はコースごとに異なります。その中で天文科学コースの母体は国立天文台であり、いろいろな天文学的な研究ができます。詳しくはこちらから。

首都圏から離れたくなかったので、主にこの3つから考えることにしました。このうち、総合文化研究科については事前のTOEFL iBTの受験が必須です。

しかし、5月に突然TOEFLを受けたいといっても準備はかなり大変です。出願期間に間に合うような期日で、かつ自分が受けに行ける範囲の会場を探し、身分証明書を準備しなければなりません。結果パスポートが間に合わず、署名付きの学生証で受けられる、という風の噂を頼りにして会場に向かったのですが……

 

はい、実際に試験を受けるという段階で「この身分証明書では受けられませんね~」と言われ、門前払いを喰らいました。署名付きの学生証は運転免許証などとセットでなければ効力を発揮せず、身分証明書として有効ではありませんでした。みなさんは風の噂に流されることなくしっかり調査してTOEFLに臨んでください。

これは門前払いを喰らった後自棄になって行った小田原

とまあかなりの大ポカをやらかして、広域科学専攻に出願することはできませんでした(電磁流体を専門にしている教授がいらっしゃったので、このミスはかなり大きかった)。幸い総研大の天文科学コースと東大の理学系研究科はTOEFLがなくても受験することができるので、この二つに出願することで正式に決定しました。

しかし、総研大に出願するところでまたひと悶着ありました。天文科学コースではこんな様式の書類が必要ですよ~というデータをWEB上に公開してくれているのですが、なんとそれだけでは足りず、実際に書類を取り寄せないと出願できない、ということに出願三日前に気づいたのです。総研大の本部は葉山にあるので、このままだと間に合うかどうかはかなりシビアになります。そこで、総研大に参画している研究機関ならどこでも出願書類を取り寄せることができるのと、総研大のどこのコースに出願するにしても書類の様式自体は変わらないことから、大学から歩いて行ける国立情報学研究所で出願書類を取り寄せることで事なきを得ました。なにこれ

そして、理学系研究科では複数の専攻を併願することができないため、天文学専攻と地球惑星科学専攻のどちらに出願するか選択しなければなりませんでした。天文学専攻の定員は約20名、地球惑星科学専攻は約100名と大きな隔たりがあります。万に一つでも院試浪人を避けたかった自分は、より定員の多い地球惑星科学専攻を選択しました。

こうしてひと悶着もふた悶着もあった末になんとか出願を終え、実際に試験対策の勉強を進めることになりました。

 

勉強勉強勉強勉強勉強勉強勉強対策対策対策対策対策対策

 

東大と総研大の違いですが、学生が多いか研究者が多いかという違いがあります。東大は結局のところ大学であるため、自分と年齢の近い研究者が多く身近にいてすぐ会うことができます。それに対して総研大は研究機関がメインであることもあり学生の採用数が本当に少なく(天文科学コースは例年一桁)、東大とは全く環境が異なります。学科控室の空気が好きだった自分には前者の方が合っていると思い、東大の地球惑星科学専攻の方に重きを置いて勉強することにしました。

さて、勉強した内容ですが、地球惑星物理学科の友達から過去問とその解答をいただき(本当にお世話になりました)、過去問をやりまくってわからない分野を埋める、これにつきました。学期の間は実験やレポートで忙しくなかなか勉強時間を確保できなかったというのもあり、対策にかけられる時間があまりなかったので、限られた時間の中で点数を最大化できるような方針をとりました。英語(TOEFL iTPをその場でうけることになります)の対策はやってもしょうがないと思い全く行いませんでした。

地球惑星科学専攻は5つのコースに分かれており、そのうち自分がやりたい宇宙物理の電磁気学的アプローチをやっている研究室は宇宙惑星科学コースに含まれています。

また、地球惑星科学専攻の専門科目は数学、物理学、生物学、化学、地球科学に分かれ、その中から科目を二つ選び解くというものでしたが、宇宙惑星科学グループの3-4割の研究室は事前に数学と物理学を選択してください、という指定をしていたので、この二つの対策を行いました。

数学

大問は二つあり、第一問は小問集合、第二問は線形代数微分方程式の問題が出ていました。小問集合の内容はさまざまで、微分方程式を解くようなものから大学受験の数学で出てもおかしくないような問題も出ます。基本的にはここの「統計データ解析」を除いた範囲からは大体何が出てもおかしくないと思います。

物理

大問は三つ。初等力学、電磁気学、熱力学が出題されます。初等力学は慣性モーメントを用いた問題が出ることが多いので、しっかり計算できておく必要があります。電磁気学は幅広く出題されますが、大学受験でやった粒子の加速や電磁誘導も出ることがあります。熱力学はあまり大学受験物理っぽい問題は出ず、第二法則やマクスウェルの関係式を覚えている(自分はマクスウェルの関係式はその場で導出しましたが)ことは大前提として、問題に書かれている誘導にどれだけ素直に乗っかることができるかがカギになります。

 

いざ本番!

 

あさひ……大学院入試だよ……

そんなこんなで当日を迎えました。

 

英語

リスニングは馬鹿みたいに速くてあまりできませんでした。TOEFL iTPの対策に関しては少なくともあのリスニングの速度になれることはやっておいた方がいいかもしれません。

文法は意外と平易というか、明らかな品詞のミスとかを指摘すればいいです。

リーディングはただ読んで殴ればいいです。文法とリーディングに関しては多少時間が余りました。

専門科目(数学・物理学)

最初に数学から取り組みました。微分方程式を解いたり行列の固有値を求めるまではまあそこそこうまくいっていましたが、確率がよくわからない。こりゃたまらんと思い大問2に行くとそこにはなんとベクトル解析。微分方程式線形代数にヤマを張っていたのでベクトル解析には手も足も出ず、小問を1,2個ぐちゃぐちゃっと書いただけで涙の撤退をしてしまいました。お前本当に物理学科?

そんなこんなで物理学の方に行きましたが、こちらも見慣れないセットアップの問題が多く一苦労。しかし、力学も電磁気学も基本的には問題文に書かれているままの誘導に乗っかって計算すればいい問題でした。力学はコリオリ力に関する問題、電磁気学マクスウェル方程式について変位電流の項をぐちゃぐちゃする問題でした。熱力学はこの二つに比べれば比較的とっつきやすい問題でした。いつも通り熱力学変数をぐちゃぐちゃして、最終的に全微分の形になっているエントロピーをうまく積分してあげてエントロピーの様式を導出してあげればOK。

熱力学→電磁気学→力学の順にやり、熱力学と電磁気学を完答、力学は最後ちょっと時間が足りませんでした。

 

例年5割あれば受かると言われており、まあ受かったやろwと思いつつ口述試験対象者発表当日を迎え、出願していた宇宙惑星科学コースと固体地球科学コースの両方で対象者になっていることを確認しました。

 

口述試験

なんか中身を言っちゃいけないらしいのであまり具体的なことは言えませんが、少なくとも自分の志望動機を明確に言えるようになるといいと思います。

 

そして合格へ……

過去のデータと照らし合わせて、口述試験で落とされることはあまりないだろうと思いつつ過ごしていましたが、実際どちらの口述試験でも落とされることはなく、両コースともに合格が決まりました。ありがとうございました。

 

(11/2追記)

必要書類を学務に届けて(なんでオフラインしかないの?)、点数開示をもらいました。

開示の結果

物理学と英語はまあ想定内だったんですが数学が明らかに手ごたえより点数が高く、意味不明でした。理学系研究科の英語試験は50点の最低保証があるとかねてからの評判ですが、専門科目にもそれがあるのかもしれません。

 

 

最後に

この記事で結局言いたかったことですが、

・進路の選択は本当に精査して行いましょう。研究室が謳うテーマだけでなく、できればそこの修士論文も読み、学生が実際どのような研究を行っているのか見えるとよいです。

・出願はなるべく早め早めに行いましょう。TOEFLの失敗も天文科学コース(ちなみにこっちは落ちてました)の出願のゴタゴタも、自分が出願を限りなく後回しにしていたことから生じました。

・対策は基本的に過去問をぶん回し、理解の足りない分野を適宜参考書で補うといいと思います。自分は「詳解と演習 大学院入試問題」を使っていました。

 

ありがとうございました。