土を離れ、七つの海を股にかける -芹沢あさひLPとは何だったのか-
※この記事には、あさひの全共通コミュとその他のイベコミュなどのネタバレを含みます。それでもいいよ!という方のみ閲覧をお願いいたします。
※気合を入れて書いたので、非常に長くなっています。もし全部見てらんねえよ!とお思いになったら、☆が付いている部分が筆者が特に言いたいことが書かれているので、そこだけでも見ていただけると幸いです。
※解釈違いな点がございましたら、ご気軽にコメントください。励みになります。
はじめに
イエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
いや、編集時点ではまだ引いていません。galaxです。
この記事を書き始める直前に芹沢あさひ学会(全国に学会員283億人を抱える)を激震させる大変な事件があったところですが、今回はタイトルの通り、芹沢あさひのLPについて語りたいと思います。
というのもこの共通コミュ、筆者の観点から言えば、これまでのあさひのコミュの一つの集大成とも呼ぶべきコミュでありました。これは是非他のコミュを踏まえたうえでの感想記事を書くしかあるまい!ということで書かせていただく次第です。
他のアイドルのLPコミュをすでに閲覧済みの諸氏はお気づきでしょうが、LPのコミュは特にGRADコミュとの結びつきが強い傾向にあります(咲耶LPなどはその筆頭でした)。なのでこの記事でも、特にGRADとLPとの結びつきを重視して見ていきたいと思います。では早速。
芹沢あさひWING振り返り
まず、WINGと感謝祭の内容をざっと振り返ります。もう少し詳しく知りたい方は去年の記事で触れているので、よければ是非ご覧ください(宣伝は基本)。
・出会い:街頭モニターのダンスを見ただけで完コピする(!?)少女「芹沢あさひ」と遭遇し、彼女をスカウトする。
・シーズン1コミュ:あさひ、初めてのダンスレッスン。集中すると周りが見えなくなるが、そのパフォーマンスは凄まじいものがあった。
・シーズン2コミュ:あさひ、朝からダンスの自主練。シーズン1の初日からずっと同じ振り付けを突き詰めている。
・シーズン3コミュ:レッスン終わりに倉庫で自主練をしようとしているあさひ。街頭で見たアイドルに感じた輝きとドキドキが離れてくれない!という反論に対し、プロデューサーは彼女の熱意を否定せずに、勝つ無理のない線引きを用意する。
シーズン4:初めてのステージに立ったあさひは、圧倒的なパフォーマンスを見せつける。彼女は満足するとともに、自分にとってのアイドルとは何なのかについて考え始める。
WING優勝コミュ:Pと初めて出会った街頭モニターにいたあさひ。そこであさひは、アイドルが楽しいと感じた理由を、「今までは独りで楽しさを追求し続けてきたが、今は隣にプロデューサーがいる」ことにあると気づく。しかし、本当にそれだけなのか?としばし考えるあさひに対し、Pはこれから一緒に見つけていこうと語る。
まとめれば、WINGコミュは「芹沢あさひが、初めて一人でないことの強さと楽しさに触れるコミュ」であったと言える。これまで一人で楽しさを追求し続けていたあさひは、時に周囲と衝突することもあった(WorldEnd:BreakDownのイベントコミュ参照)が、ここで彼女は一緒にその楽しさを追求する人がいることの魅力に触れたのである。
ストレイライト感謝祭振り返り
WINGに続いて、感謝祭のコミュを振り返っていきたいと思います。こちらはやったことがないので、先ほどより丁寧に。
①オープニング(個別) 「空の青さを知る者よ」
学校終わりに、直接次のバラエティ収録の仕事場へ向かう車中。どうやらあさひは学校には欠かさず通っている様子(「芹沢あさひと僕」では学校に来なくなっていたが、あれはFAKE NEWSだったようだ)。アイドルはいままでやってきたことと違い、「キラキラ」がいつまでも絶えることなく続いていて、それはプロデューサーのお陰だと語る(!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)。毎日同じ教室にいるより、毎日新しい人に出会い、新しい経験をする。そうした日々が気に入っているのだと彼女は言う。
②オープニング(ユニット) 「The story so far」
さきほどの個別コミュであさひが向かっていたバラエティの仕事を、冬優子と愛依が事務所のテレビで見ている。冬優子の発言などから、あさひはユニットではなくソロでの仕事を多く持っていることがわかり、その影響が感謝祭の準備に出ないことを心配している。そして、レッスン続きの自分たちと、既にたくさんの仕事に出ているあさひを比較し、自嘲するような場面も見られる。
いっぽう、仕事へ向かう車中のあさひは仕事続きで疲れている様子だが、久しぶりのレッスンに心躍らせている様子。「雨、降るらしいっすね」といういかにも不穏を煽るようなセリフでコミュが終わる。
タイトルの「The story so far」というフレーズがいかにも、といった内容のコミュです。冬優子と愛依は物理的にあさひからは遠く離れた場所にいるだけでなく、心理的にもどこか遠くに行ってしまったような、そんな感覚であさひを見つめています。同じユニットであるにも関わらず(これの比にならないくらいユニットメンバー同士が疎遠になっていたコミュが最近ありました。SHHis感謝祭の実装はまだかなぁ!)。これが問題となっていくのだろうと思い、続きのコミュを読んでいくことになります。
ここで「雨」が降っていたことをよく覚えておいてください。
③シーズン1コミュ 「One step」
大きめのアイドルフェスに出演するストレイライトだが、冬優子はどこか集中できていない様子。その理由はリハーサル後、通りかかった客の「ストレイライト=芹沢あさひがいるユニット」という認識をしたうえでの発言で匂わされていますが、本番後により直接的に描かれています。冬優子は、「あさひを目立たせるために」、自らの立ち位置を通常より一歩後ろにずらしていたようだ。冬優子自身が、「ストレイライトは芹沢あさひのユニット」という観客の要求に応えるために動いている。それを感じ取ったあさひが理由を尋ね、場が険悪なムードで包まれそうになるも、愛依が和ませてその場は収まる。とはいえ、何か決定的な溝が少しずつ広がっていることをありありと感じさせるコミュである。冬優子の、その「One Step」の中に、どれほどの心理的隔絶がこもっているのだろうか。
④シーズン2コミュ 「Farce」
感謝祭のアイデア出しに勤しむ3人。なんだかんだユニットとして形が見えてきており、冬優子が頭を悩ませつついろいろなアイデアが出てくる。その中で、愛依もあさひに対して「雲の上の人ってカンジ」という発言をする。愛依は長いこと「2人の足を引っ張らないように」というスタンスでい続けるので、このコミュだけでそうというわけではないが、この発言に対し考え込むあさひ。
一方、事務所にいるPのところへ向かった冬優子は、あさひがある音楽番組のアワードを受賞した、ということを知らされる。毎年放送される、ホールを使ったゴールデン帯の3時間特番(ちょうどこれぐらいの次期にやってそうな番組、MUSIC DAYとかだろうか)に、あさひだけでなく冬優子と愛依にも出演の依頼が来ているというのだ。賢い冬優子はその意味をすぐに悟る。要は体のいい引き立て役だ。冬優子は新規ファンを獲得するチャンスだと言い承諾しつつも、あさひを自分とは違う、才能に溢れた人間だとして、どこか諦めたかのような発言をする。
farceには「茶番」などといった意味があります。紛れもなく、このオファーを聞いた冬優子の感情でしょう。自分は芹沢あさひの引き立て役としてステージに立つにすぎない、彼女にとってそれはとんだ茶番でしょう。
⑤シーズン3コミュ 「error code:017」
先述のゴールデンの音楽番組に出演するストレイライト。ユニットでの演技を終え、これからあさひのソロステージ、という場面。あさひはその卓越したパフォーマンスを観客に見せつける。冬優子が「追いつけるわけがない」と言ったところで、なんとあさひが突然演技を止めてしまう。もちろん、収録はストップ。たくさんの人間に迷惑をかけてしまった形となる。なぜ演技を止めたのか、問い詰める冬優子に対し、あさひは「気が散っちゃって……カメラとか、スタッフとか……」「ステージの上、立ってたら……なんか、寒くなって……」「——……なんでわたし、ここにいるんだろって…………」と、彼女にしては珍しい歯切れの悪さで、訥々と弁明し始めます。その後選択肢があり、冬優子と愛依が互いに「ちょっと、相談したいことがあるんだけど」と呼びかけます。
このコミュは、あさひの説明が具体的でないだけに解釈の分かれるところだと思われます。選択肢から分かることは、あさひは「新人アイドルのトップ」と言われたこの賞を取りつつも、未だ満足していなかったこと、冬優子は「自分のしたいこと」を見失っていたであろうこと、愛依は二人の「背中を見る」ことに終始してしまっていたこと、などがわかります。筆者自身の解釈は、シーズン4コミュの内容を見てみたうえで述べていきたいと思います。
ここからは余談。「error code:017」というタイトルの意味ですが、これは芹沢あさひのアルバムのURLを参照するとピンと来るかもしれません。
おや???????????????????????????
URL欄に「17」という数字が書いてある、これは偶然だろうか????????????????????????????????????????
勿論偶然ではありません。真相ですが、これは芹沢あさひがこのゲーム内で17番目に実装されたアイドルであることを表しています。つまり「芹沢あさひに何らかの異常が発生した」と言う感じの意味です。なかなか洒落ている。
☆⑥シーズン4コミュ 「Shall we dance?」
久しぶりの3人での自主レッスン。その前に冬優子はあさひに、「あんたのこと、教えなさい」と切り出す。そして、いろいろな賞も取って確実に実績を上げているにもかかわらず、全く嬉しそうでない理由、彼女がアイドルをやる理由を問う。それに対してあさひは自分が出来る最高のパフォーマンスをするため、と返すが、それに対して冬優子になぜこの間の収録で急に踊れなくなったのか問われると答えに窮する。問答が行き詰ったところで、堪えきれなくなった愛依、そして冬優子が2人でダンスを始める。それは、「あの」芹沢あさひですら刮目して見ざるを得ないほどのパフォーマンス。その後冬優子は、自分の最初の「トップアイドルを獲る」という志(Straylight.run()イベントコミュ参照)を改めて表明し、あさひはそのための通過点でしかない、と高らかに宣戦布告する。愛依も、2人の足を引っ張らないようにだけでなく、自分の力で2人に追いつこうとする、という決意を誓う。それに対しあさひは、簡単には追いつかせないと堂々と2人の決心を受け止める。そして3人の自主レッスンが始まる。それはこれまでの3人に漂っていた、何かがかみ合わない雰囲気とは全く無縁のものだった。
重要なコミュです。これまでの芹沢あさひ、たとえばWINGの彼女ならば、「自分に出来る一番のパフォーマンスを」という答えでも間違いではなかった。しかし今や彼女はユニットとして活動を続けていく中で、お互いに切磋琢磨し合い、向上していくことの楽しさ、有意義さを知ってしまった。シーズン3で足を止めてしまった理由は、僕はここにあると思っています。いままでモチベーションが自分の中だけで完結していたのが、ユニット活動の過程で彼女自身意識していないままに冬優子と愛依に依拠するようになっていた。だからこそ、2人が自分の「隣(距離的にも、心理的にも)」にいない、という状況に困惑し、自分が踊る理由がわからなくなってしまった。そしてシーズン4で、ふたたび、いや今まで以上に2人との距離が近づいたあさひは、とてもいい表情で笑います。かわいい。つまるところ、ここまでのコミュで「アイドル芹沢あさひの存在意義の根本的な転換」を暗示しているわけです(実質あさひコミュじゃねーか!となりますが、まあイベコミュでも愛依回とか冬優子回とかあるし…)。いわば、「1人でないことの弱さ」の側面を理解できるようになったのです。
どうしても挟みたかった本番前コミュ
感謝祭本番に挑むあさひ。いままでは同じことばかりやらされるリハーサルが好きではなかったが、ユニットでやるようになって、隣の2人が上手くなるたびにステージがさらに磨かれ、それに果てが見えなく怖い、という心情を吐露する。そうしてユニットの存在意義に気づいたあさひの発言が以下の通り。
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この記事は以上になります。読んでくださってありがとうございました。
冗談(?)はさておき、自分が1人でなくなっていたことに、その不安に、彼女はようやく気付くことが出来ました。この感謝祭では3人ともに成長が見られますが、特にあさひは、自らのアイドルとしての存在意義を問い直す大きな契機をむかえたことになるのです。
⑦感謝祭EDコミュ(ユニット) 「(not?)Stray light」
仕事を終えて事務所に到着する3人+P。さっそく冬優子が2人の振る舞いについて説教を始める。Pはそのほほえましい様子を笑いつつ、「3人の」魅力がしっかり伝わり始めていることに確かな喜びを感じている様子。そして自然な流れ(?)で冬優子をユニットのリーダーに指名する。それを茶化す2人と冬優子が再びじゃれ合ったところでコミュが終わる。
ユニットの「センター」が芹沢あさひであることは明確にゲーム内で示されている(Straylight.run()EDコミュ参照)のですが、リーダーの指名はここが初めてです。ここから冬優子の冬優子P伝説(?)が始まったと思うと、感慨深いものがあります。
☆⑧感謝祭EDコミュ(個別) 「やがて、海の広さを知る者よ」
レッスン終わりのあさひは、Pに一緒に踊ってほしいとお願いする。Pは承諾するも、流石に一緒のダンスは厳しく、あさひにも「やっぱり下手っすね」と言われてしまう。あさひは、Pにはやはり見てもらうのが一番よく、一緒に踊るのはユニットの2人でなければだめだと再認識する。そして、2人に対抗心を燃やし、2人に負けないように自主練を頑張りたいという決意を燃やしつつ、Pには自分の代わりに自分のことをずっと見ていてほしい、という願いを改めて口にする。
このコミュを経て、あさひにとっての「他者」の範囲は確実に広がりました。WINGの決勝後ではPと2人で楽しいことをしたい、という認識であったのが、感謝祭後ではそこに冬優子と愛依が新たに加わりました。こうしてあさひは、少しずつではありますが自分の興味の範囲を広げていき、「やがて、海の広さを知る」のでしょう。
この海というモチーフも、後々の伏線となります。
☆芹沢あさひGRAD振り返り
さて、次はあさひGRADの振り返り編となります。このコミュは特に抽象的な表現が多く、自己解釈の割合が増えていくと思われます。「こんな意見もあるんだな~」ぐらいで見ていただけるとありがたいです。
①オープニング 「すごい箱」
ある日事務所にいたあさひは、「バイクの後ろに、箱が付いてる」乗り物を探しに出かけてしまう。プロデューサーは、『GRAD』の予選に向けて、ファンの人たちに見せる心構えを持っておいて欲しいということを伝えようとするが、あさひには「練習しておけばいいんすよね?」とうまく伝わらない様子。その後、やはりあさひ一人では何か危険があるかもしれないと思ったPは、出て行ったあさひを追いかけて街へ出ていく。
「芹沢あさひってこんな子」とみなさんが抱く印象に近いコミュかもしれません。いろいろなことに興味を持ち、その反面他者の機微には疎い。感謝祭でユニットで活動するという他者性を受け入れたあさひでしたが、やはりそれ以外の人の心には疎く、「ファンに心を届ける」という、アイドルの本分とも呼ぶべき行為への理解は未だ乏しい様子です。
②シーズン1コミュ「出前っす」
事務所に来たあさひは、突然そばの出前に弟子入りしたい!とPに切り出してくる。先日のバイクは、そばの出前を運んでいるバイクだったようだ。バイクについていくのは危険なので、そば屋さんの大将が自転車で出前に行くときだけついていくので、火曜日と土曜日の午後には予定を入れないで欲しいという。それに対してPは、理由を聞く、などの前に、仕事も勉強もあるのに「そんなわけのわからないこと」に時間を使っているわけにはいかない、と諭そうとする。その後言い過ぎたと反省するP。翌日、Pの説得もむなしく、そば屋の出前についていくあさひ。とても楽しそうだが、「お客さんのこと、作った人のことを考えて運ぶ」という旨の大将発言に少し首を傾げる。
Pの反応は常識のある大人としては、至極正しいものなのかもしれません。ですが、理由などを聞く前に頭ごなしに否定するのは、いつもの完璧超人高身長イケメンのPらしからぬ言動。結果あさひとは話し合いが決裂してしまった形となります(初見の時はどうなっちゃうんだ!?(ミルクボーイ)みたいな感じで、そわそわして見ていた)。何かとても悪いことが起こっているわけではないですが、ちょっとしたボタンの掛け違いから物語が動いていく。SHHis感謝祭みたいに胃薬が必要なレベルで胃がキリキリするわけではないですが、うまくいかないもどかしさのようなものを感じます。
③シーズン2コミュ「……」
Pはあさひが「弟子入り」しているというそば屋へ向かう。すると大将が威勢よく挨拶を返す。その間、あさひはダンスレッスンをするも、ステップの中のターンの部分が楽しいと言って、そこの練習ばかりを行っていた。Pはあさひの自覚の足りなさを危惧し、翌日あさひを呼び出し話をする。あさひにとって今大事なことは何なのか考えてほしい、と諭し、GRADへの集中を促そうとするも、あさひは「それはプロデューサーさんのやりたいことじゃないんすか?」「わたしは、修行も『GRAD』もやりたいっすよ」と言い、理解してもらえない。Pは「俺が、間違ってるのか?」という葛藤に駆られる。
初見の時は「う~んあさひにも一定の非がありそうだけどな」と内心思っていましたが(「常識」ある人間としての意見)、今見返してみると結構Pにも非があるんじゃないか?と思っています。芹沢あさひ全肯定botなので。「あさひにとって今大事なことは何か」というワードチョイスがあまりにも悪手なんですよね。それは悪手だろ蟻んコぐらい。あさひは修行のこともGRADのことも平等に大事に思っているのです。もちろん、周囲の人への迷惑を考えたらどちらが重要なのかは明白です。しかし、それは「あさひにとって」の大事さとは何も関係ない。GRADも修行も、平等に彼女にとっての楽しみの一つなのです。霧子に対する時のシャニPはよく議論に上がりますが、あさひに対するPも完璧超人と言う感じではなく、こういうディスコミュニケーションを起こしがちな印象があります。
どうしても挟みたかった、予選前コミュ
さっきとはまた別のニュアンスでですが、どうしても挟みたかったコミュです。
Pは「練習してきたことしかステージでは出ない」「今できるのは心をこめること」と予選に向かうあさひをなんとか応援しようとするが、あさひは「練習いっぱいしたから大丈夫っすよ」とそっけない対応。そればかりか…
というように、あさひの機嫌を損ねてしまう。
初めて見たとき「うわあああああああああああ」って感じで見ていたコミュです。Pとあさひのディスコミュニケーションが、あまりにも致命的な形で表面化してしまった。Pとあさひの関係性はここからどうなってしまうのでしょうか。
④シーズン3コミュ「…………」
実は予選後のコミュで、Pはあさひの出前に付いていくことを決めていた。あさひのやりたいことを理解するために。しかし、「素晴らしいです」と言ってくれているダンストレーナーに対して、内心「素晴らしくなんてない」と独り言ち、自分があさひの心情を理解しようとせずにいたことを恥じていた。いっぽうそば屋で大将と話すあさひは、Pに岡持ち*1を持ってもらう予定だった、と話す大将に対し自分がもちたいと話すが、大将は「お客さんに心を込めて『毎度ありがとうございます』」ができたら、とやんわり断る。その後のボイトレで、あさひはトレーナーから「もっと心を込めて、丁寧に歌ってほしい」という指摘を受けるが、あさひは納得できない様子。そのままほどなくしてレッスンは終わるが、あさひは終了のあいさつをせず「なんか、つまんないっす」と不満な様子で、そのまま部屋を飛び出してしまう。
「誰かに向けて心を込めること」、それは彼女にとって全く未知の体験です。その必要がなかったから。なので「毎度ありがとうございます」に関しても「ただ挨拶するだけっすよね?」という風に、その行為の表面上の意味しかとらえきれずにいます。ここでのあさひの無礼な行動は褒められたものではない、それは事実ですが、周囲の大人、Pも大将もトレーナーも「心をこめる」という(彼女視点では)要領を得ない説明で自分の欠点を指摘されても何が足りないのか把握できず、彼女なりにフラストレーションがたまっていたのかもしれません。しかし、このような状態で本当にGRADは大丈夫なのでしょうか。
⑤シーズン4コミュ「競争っす」
さきほどの場面で、「まずありがとうをいいなさい」「トレーナーさんに失礼だ」と(何の間違いもないのだが)きつい言い方をしてしまったことを後悔しつつそば屋に向かうP。着いて早々、あさひが取り乱した様子。なんと大将が手をやけどし、出前に行けなくなってしまったというのだ。自分が代わりに(岡持ちを持って)出前に行くと主張するあさひですが、大将はそれを渋る。そこでPはあさひに「プロデューサーさんは、心を込めて『毎度ありがとうございます』できるっすか?」と訊かれたことを思い出し、心を込めるというのがどういうことなのかを見せるため、自分が岡持ちを持って出前に行くことを進言し、大将はそれを承諾する。
そして出前に向かう2人だが、あさひは「自分の方が上手くできる」と不満が隠し切れない様子。だがその自身も無根拠なものではなく、配達先の場所も、顔も電話番号もすべて記憶しており、それをもとに最適な道順を提案する。Pはあさひの提案を呑みつつ、「勝負はここからだ」とこのゲームのジャンルがわからなくなるようなセリフとともに道を急ぐ。そして、配達先のひとつの老婦人のところに着く2人。Pは熱くないようにハンカチを貸したり、「ゆっくりで大丈夫ですよ」と声をかけるなど、老婦人を気遣う所作を随所に見せる。それに対しあさひは早く行かないと次の出前ができないと指摘するが、Pは今も立派な出前のうちだと諭す。するとあさひは、老婦人に「毎度ありがとうございます」という挨拶をする。大将が、あさひにとっての課題だとしていたところだった。Pはそれを見て、「ちょっとは伝わってるのか?あさひ————」と、あさひと全く心を通わせることができていなかった状況に、光を見出した。
Pは自分から「やるべきこと」を押し付け、あさひがどう考えているのか、何をしたいのかを尊重する姿勢を忘れていた。いっぽうあさひも、自分がやりたいことを優先させ、他の人がどう思うのかを考えていなかった。それらの問題が前進するのがこのコミュです。このコミュはとても重要で、WINGでP、感謝祭でユニットの2人という他者性を受け入れたにとどまらず、ここであさひは「紐帯を持たない、赤の他人」という他者性に、心もとないながらも初めて手を伸ばしたのです。他者と関わることで、傷つくことがあるかもしれない。彼女自身の在り方をゆがめられるかもしれない。そんな危険を知ってか知らずか、彼女は自らの世界をどんどん広げていきます。そうして加速度的にいろいろなものを吸収して成長していく彼女だからこそ、人々は彼女に危うさと、裏腹の眩いばかりの魅力を感じてしまうのではないでしょうか。筆者も、そんな輝きに魅せられてしまった人間の1人です。
⑥EDコミュ「毎度ありがとうございます」
事務所にそばの出前に来るあさひ。大将が差し入れを持ってきてくれたようだ。あさひはなんと岡持ちを持たせてもらっており、GRADを優勝して忙しくなるので、卒業試験のために来たのだという。聞けば、「美味しい」か「ありがとう」と言ってもらえれば合格なのだそうだ。戸惑いつつ、Pは「美味しい」とあさひに告げる。それに対しあさひは、「毎度ありがとうございます!」とPに告げ、元気よく事務所を去る。Pは、心がこもっているにせよないにせよ、それを自発的に言ってくれたことを嬉しく思う。そして、「毎度ありがとうございます」という言葉。それはそばを配達する時の言葉だが、意味合いとしては「いつもお世話になっている人に感謝を伝える言葉」。それがあさひの口から聞けたことに、Pはあさひが少しでも自分に感謝をしてくれているのかもしれない、ということに何よりも喜びを感じ、噛み締めながら彼女がくれたそばを食べる。
このGRAD中、Pはずっとあさひに自分の心を伝えられないことを悩んでいました。決勝勝利後のあさひの「伝えられないなら、伝えられるようになればいい」という言葉や、最後のあさひの言葉に、紆余曲折の果てにあさひに何かを伝えることが出来たのかもしれない、という安堵を感じています。よかったな…
という話はさておき、このコミュであさひは、「自分のパフォーマンスを見る人に、気持ちを伝える」ということの一端に触れます。これがLPのコミュにおいて大きな意味を持ってきます。
☆芹沢あさひLP振り返り
本題。これまでの話は全て、このコミュのためにありました。このコミュは、これまでの共通コミュの全てを踏まえた結論としてあります。単体で読んでももちろん素晴らしいコミュですが、いままでの共通コミュを振り返ってからだとより重要さが増します。早速、見ていきましょう。
①OPコミュ「新しいこと」
雨が大きな音を立てて激しく降っている夢を見ているあさひ。そこから目を覚ますと、事務所でPが大きな音を立ててタイピングしており、それが夢にも出てきてしまったようだ。どうやらあさひは、ティーン誌のアンケートで「最近始めた新しいことはありますか」という質問を考えているうちに寝てしまったようだ。Pと相談した結果、新しいことは作ってしまえばいいと考え、トレーナーにやってほしいと言われた走り込みを始めることにする。
このコミュ、実際に見てもらえればわかるんですが、タイピングの音、あさひがソファから起き上がる音、鉛筆を動かす音、車の音など、とにかく細かい音でもいちいちSEを入れています。このコミュ全体で、この「音」が何かの役割を果たすのでしょうか。そして、あさひが見ていた夢は「雨が降る夢」。感謝祭のOPコミュと全く同じです。その時はまだ降っていなかった雨が、ここでは(夢の中とはいえ)降りだし、その音をあさひは聞いている。感謝祭での描写から進んでいることがわかります。では、どんなところで進んでいるのでしょうか。という内容に、以降のコミュで繋がっていきます。
②シーズン1コミュ「風に乗って」
アンケートに書いた通り、走り込みを実践しているが、ただ同じ場所を走るだけの行為に飽きてきた様子のあさひ。そこでPは、あさひを新しい場所に連れていく。そこは川沿いの整備された石畳の道路。あさひは大喜びで走り込みを始める。途中でそのペースについていけなくなったPはしばらく辺りの音を聞いてぼーっとしていたが、なかなか戻ってこないあさひを探しに出る。するとあさひは、住宅地の間を縫うように流れる川に、船が沢山通行している様子を見ていた。そのうちの一隻の中に、何か画面のついた機械があることに気づく。そうしていい時間になったところで、2人は事務所に戻ることになる。
ここでもPは川の「音」を聞いています。やはりこのコミュ、音が重要なファクターとして存在している様子。そして存在が言及されつつスルーされた謎の機械。これが今後の物語にどうかかわってくるでしょうか。
③シーズン2コミュ「すごい雨」
また川のところに走りに行きたい、と言うあさひ。それに対しPは急ぎの仕事があるらしく、一緒に行ってあげることができない。その後のあさひの問いかけに対しても生返事で仕事の方に集中しているPに対し、あさひはタイピングの「音」がうるさいと不満を漏らし、Pの仕事はそんなに大事なのか?と問いかける。Pが答えに窮していると、大きな音とともに突然外から雨を伴う強い嵐が吹きつけ、書類をめちゃくちゃにしてしまう。そのめちゃくちゃになってしまった書類の整理を手伝おうとするあさひに対し、Pは仕事に集中するあまり、あさひのことを見れていなかったことを謝罪する。そして、シーズン1で行った川の景色は変わっていくことで飽きない魅力を醸し出していたことを思い出し、あさひにも変化することできっと輝きにつながる、『新しいこと』を本格的にやってみないかと提案する。あさひはそれを承諾し、強く降りだした雨を見て「———なんも、見えないっす」と結ぶ。
実はこれ、言うなればGRADコミュの短縮版追体験となっています。仕事のことを思うあまりあさひ自身のことに目を向けられていないPと、自分のやりたいことを優先させるあさひ。これはまさしくGRADで見た両者の立場そのものです。しかし、2人はもうGRADのことを乗り越えました。だからここでも対立などが発生することなく、Pは自分の状態を冷静に把握することができ、持ちあがりかけた不和は解消される。GRADを読んだ後だと少しニヤっとできるコミュです。
そして、再び出てきた雨というモチーフ。それに対しあさひは「なんも、見えないっす」という感想を漏らす。このコミュが、この言葉で結ばれる意味は何だろうか。雨というモチーフの意味するところの謎は深まるばかりです。筆者なりの意見をより後ろで述べていきます。
④シーズン3コミュ「あーあーあー」
天気も良く、再びあの川まで来た二人。いろいろな船がいる中で、あさひはシーズン1で見た機械のある船に興味がある様子。その船を見つけたあさひは、船の所有者の女性のもとに直接向かう。結果しぶしぶながらも船に乗せてもらえることに。船の上から見える新鮮な景色、新しい体験に心躍らせるあさひ。そしてあさひは、最初に興味を示していた、船の機械について尋ねる。するとそれは魚群探知機で、超音波を出し、その跳ね返りを計測して魚の位置や周囲の地形などを把握する機械であった。試しにあさひも「あーあーあー」と音を出してみるも、もちろん魚がいるかどうかなど何も分からない。そんな何も見えない水の中を、音の跳ね返りで把握できる魚群探知機。そんな存在に、あさひは深い感銘を覚える。
シーズン2の最後で、強い雨で「なんも見えないっす」と言っていたことがここで繋がってきます。激しい雨、それはすなわち街全体が水の中にいる状態と近似することができます。そんな視覚情報がない中でも、音を使って周りのものを探すことができる。そのことに、あさひはとても感動しているようです。全体を通して描かれてきた「音」の役割が少しずつ見え始めてきました。さらに、感謝祭にあった「海」というモチーフも、魚群探知機によって結び付けられ始めます。
⑤シーズン4コミュ「はねかえって」
ダンスレッスンを終わらせ、「ありがとうございました」と感謝を述べるあさひ。それを見届けたPはあさひを連れて行こうとするが、彼女はどうやらPに見せたいパフォーマンスがある様子。そのまま彼女が行ったパフォーマンスは、Pを一瞬で虜にしてしまうほどの卓越したボーカルパフォーマンス。Pが感心した様子であさひに尋ねると、彼女は先日遭遇した魚群探知機のように、周囲へ声を跳ね返すように歌ったのだという。興奮したPは、彼女にさらにその跳ね返ってきたものに耳を澄ませてほしいというアドバイスをする。そうして二人は、ソロライブへの決意を新たにする。
シーズン4は特にGRADとの対比が強く見られます。まず冒頭でダンストレーナーに「ありがとうございました」と言うあさひ。言わずもがなその「ありがとうございました」が言えずに部屋を出たGRADのシーズン3コミュとの対比です。さらに、その時は「心を込めて歌ってほしい」という指摘を受けたのに対し、今回のパフォーマンスは聞いているPの心を確実に震わせました。物は強くぶつけなければ、跳ね返ってくることはありません。つまり「跳ね返すように歌う」とは、彼女自身の熱く燃え滾る心を、ただ一方的に放つのではなく、跳ね返ってくるように、跳ね返ってくることを意識して聴衆にぶつけること。ぶつけたあとの聴衆の反応を見て、さらに自らのパフォーマンスを高めていくことに他なりません。これはGRADを通しての彼女の課題だった「自分の心を他者に伝わる形で発信すること」の答えに他なりません。彼女はここへ来て、Pだけじゃない、ユニットの二人だけでもない、聞いてくれるファンの全てという膨大な他者性に対して、互いに高め合うようなアピールが出来る可能性を生み出したのです。あさひは初めて本当の意味で「社会」と、「他者」と向き合ったのです。これはまぎれもない彼女の「変化」で、「輝き」でしょう。GRADとの色濃い対比によって彼女の変化を強調し、より強く輝きだすあさひの姿を描いているのです。この構造に初めて気づいた時筆者は深い感動に包まれました。その1%でも、読者の皆さんに伝えられれば幸いです。
どうしても挟みたかった、2曲目前コミュ(個人)
恒例(?)どうしても挟みたかったシリーズです。あさひがピンでライブのMCをやっている描写はここが初めてなんじゃないかと思います。
あさひは現在の自分の状態を「すごく熱い」と評し、とても興奮している様子。そして、観客たちにもその熱さが伝わっていることに満足を感じている。
言葉にすればこれだけですが、これも非常に意義深いコミュです。思い出してほしいのは感謝祭のシーズン4コミュ。あさひは「ステージの上にいたらなんか寒くなって」と言っていました。つまり、今回の状況と全く真逆なわけです。あの時はステージ上に1人だったが、今は違う。心をぶつけ合って、互いにボルテージを上げていける相手がここにはたくさんいる。だからこそ、あの時とは違う「熱さ」をこのステージに感じているのです。こういった細かいところまで本当に作りが丁寧で、脱帽の一言。
⑥EDコミュ「聞こえてたっす」
事務所で、何か理科のプリントを解いているあさひ。Pに声をかけるが、Pは仕事に集中して気づかない様子。あさひはその姿を見て何かに気づきます。紙をめくる音、キーボードのタイプ音、Pも「音を出して」いるということに。PはOPコミュで言及のあったティーン誌の記事を見ていたようだ。それを見ながらPはあさひの成長を感慨深く思い、あさひに『新しいこと』を探し続けていくことを楽しんでほしいと伝える。それに対してあさひは、Pも何かを探しているのか、と問う。Pも魚群探知機のように「音を出して」いるから。そしてPは、俺も何かを探しているのかもしれないと応え—————
うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
☆総括
…取り乱してしまい、申し訳ありませんでした。この記事で言いたかったことをまとめていきたいと思います。
まず、僕はこのEDコミュを見て”ガチ”で号泣してしまいました。というのも、あさひに対してPと全く同じ不安を抱いていたからです。本当に自分の声が、心が、あさひに届いているのが。本当は全然そんなことなくて、何かの拍子に離れていってしまうのではないか。彼女には、そういった危うさがありました。ですが、今回のコミュであさひは本当に成長した姿を見せてくれました。それはソロライブの時だけでなく、自分のやりたいことに前ほど意固地にならなかったこともそうです。Pが放っていた「音」は、「心」は確実にあさひに届いていました。今回のコミュはその跳ね返りなのかもしれません。
Pが音を出して探していたもの、それに対するPの答えが「あさひにも、俺の音が響いてたんだな」とあるように、探していたのは間違いなく「芹沢あさひ」そのものでした。海というたくさんの未知を探して、大海原へと旅立っていく彼女。「やがて、海の広さを知る者」。大海原はあまりにも広大で、Pですら彼女の姿を見失ってしまいそうになります。でも、Pの音が彼女に響いていれば。2人の心が響き合っていれば、どんな大海原にだって、臆せず向かっていくことができる。2人は、もうそういう強さを手に入れた。
そして筆者はこれこそが、あさひがWINGで言っていた「本当にそれだけなのかな」の答えだと思っています。2年越しの伏線回収です。いままで彼女は、自分のキラキラを一人で追いかけるだけで、そこにPが加わって楽しくなった。それ自体は間違いではないと思います。ですが、アイドルはそれだけではない。一緒にキラキラを追い求める仲間が、Pだけじゃない、ユニットの仲間、そして自分を見に来てくれるファンなど、たくさんいます。そんな「キラキラ」の輪が広がっていくこと、みんなでお互いに高め合っていく興奮。一人でいた少女が初めて得たその興奮こそ、彼女がアイドルに感じた輝きの答えなのです。
以上で、僕の言いたかったことは全てです。LPはこれまでのあさひとPの歩みがすべて詰まった、集大成と呼べるコミュでした。これからさらなる大海原へ、果てなき冒険に出かける彼女を、みなさんもどうか応援してくれれば幸いです。
最後に、アイマスとは関わりはないですが、このコミュを締めくくるに僕が相応しいと思った歌詞を引用し、締めの挨拶とさせていただきます。
岬から船を出せば
風を受け帆が膨らむ
ぼくは今 土を離れ
七つの海を股にかける
———『ちいさな冒険者』より
*1:昔のアニメなどで出てくるラーメンの出前の、自転車の後ろに乗っている金属製の箱を想像していただければいいと思います。昔は木製だったようですが